月夜に笑う**れお**
beradesuyo.exblog.jp
シンプルに生きる
Top
五月の独房にて(岩井志麻子)
2009年 10月 18日 *
(あらすじ)
社員旅行で起きたレイプ事件をきっかけに、その加害男性と不倫関係に陥り、やがて妄執の虜となって男とその関係者を追い詰める主人公・彩子。物語は彩子の果てることのない肉欲と、おぞましいほどの自己顕示欲を柱に、殺害から遺体解体作業、さらにはあくまでも殺意を否認する裁判、懲役16年の獄中生活、そして社会復帰を果たしたその後までを綴る。嫉妬と妄想の果てに暴走する女の狂気と欲望を描ききった岩井作品の集大成。


んー、久しぶりに溺れました岩井ワールド。すげードロドロです。
物語は、主人公・彩子の独白で綴られます。フィクションではありますが、平成6年 福岡県で起きた美容師バラバラ殺人事件がベースと思われます。この事件は加害者、被害者とも女性という特異なケースが世間の注目を集め、マスコミにも大きく報道されたため、記憶に残っていました。

母との関係がうまくいかない彩子は、いわゆる田舎の優等生。
教師や周囲から「いい子」、「優秀な子」とレッテルを貼られた勘違いした女の子がそのまま大人になって、紆余曲折の末に殺人犯へ。プライドだけが異常に高く、勝気で負けず嫌いで、常に女王様でいたい人。
人間関係をうまく築けない人、彩子。
「自分は大した人間」だと思い込み、狭い世界で自分より劣る人たちの上に君臨したがる井の中の蛙。
逆に自分より上だと思う人には腰低く、媚びへつらうくせに。外の世界を知らないって怖い。

実際の事件の犯人も、勘違い甚だしく手記なんか発表しちゃってるし。
しかもしっかり顔写真付き。ここまで堂々としていると、いっそお見事。(悪趣味ともいふ)
居るんだねぇ、こゆ人って。内容は、自己の正当性主張と事件の歪曲に終始しているようですが。

そんな彩子、誰も悪口なんて言ってないし非難もしてないのに、尊大な自尊心ゆえに勝手に被害妄想を生み、妄想が妄想を呼び、ついに何の罪もない他人を口汚く罵らずにはいられない。
それをまた、世間に大して大っぴらに正々堂々と言ってしまうところが自称優等生。
常に「自分は正しい」の。
育ってきた環境と言ってしまえばそれまでだけど、嫌いぬいた母をそのままなぞったような人格が皮肉と言えば皮肉です。
その物語のクライマックスで、被害者美佳が彩子に言うセリフが痛快。胸がスッとしました(笑)。

「この際じゃから、いわしてもらうけどな。実家のお母さんやお姉さんにしても(省略)決して悪い人らぁじゃないで。(省略)それを彩子さんが勝手に敵にしてもしもうて、角や牙を振りたてて追い払うてしまう」

「自分は清らかな罪のない被害者と、疑いもせん。被害者は周りのみんなじゃで。それに彩子さんは、人につけられた傷じゃと恨んどるかもしれんけどな。自分で転がって、自分でつけた傷じゃで。自分から転がっといて、こんな怪我させられたと喚かれてもな。周りも、かなわんわ」


そして後半、かなりリアルに凄惨な場面に突入。内臓の臭いが立ち上る・・・。
血なまぐさいのが苦手な方はやめといた方がいいです。
ゾクゾク、ドロドロ、ドンと来い!・・・の方は、ぼっけぇ、きょうてぇ、ゆがんだ世界を堪能出来ます。
[PR]
by bera-sakuraebi | 2009-10-18 15:31 | *
<< 那須へ ページトップ 松茸再び >>
The Original by Sun&Moon